加工食品というと、どうしても固形の食べ物を想像してしまいますが、何も食べ物ばかりが加工食品ではありません。何らかの食材に手を加えた飲料も立派な加工食品になります。
そこで今回は、私たちの生活に深く根付いている飲料の加工食品、お茶とコーヒーについて考えたいと思います。
嗜好(しこう)とは簡単ではない言葉なので説明が必要だと思います。岩波書店の『広辞苑』を調べると、以下のような説明が掲載されています。
以上が嗜好(しこう)の説明です。通常、飲食物は生命体が生命を維持、育成するために摂取されますが、嗜好(しこう)品に関しては必ずしも生命の維持、発展のために必要としない食べ物や飲み物をいいます。
確かに、紅茶やコーヒーをわざわざ飲まなくても水分補給はできますし、タバコを吸わなくても問題はありません。むしろ人体に害になるだけです。お酒も楽しみにはなりますが、人間が生命を維持するために必要な要素ではありません。
いずれにせよ代表的な嗜好(しこう)品であるお茶もコーヒーも、何らかの食材を加工して作っています。その意味で立派な加工食品ではあるのです。
お茶は茶葉を何らかの形に加工しなければ成立しない食品です。具体的にお茶といっても、
以上があります。列挙したお茶の中でも、玉露から中国緑茶までは発酵させないお茶で、ウーロン茶と包種茶は半発酵させたお茶、紅茶と紅だん茶は発酵させたお茶という違いがあります。また、漬物茶と後発酵茶に関していえば微生物による後発酵をさせたお茶になります。
どれも味わいが違い、世界中のファンがその微妙な違いを楽しんでいます。まさに栄養補給のためではなく、リラックスや充実のためにお茶を楽しんでいます。その意味で嗜好(しこう)品なのです。
ちなみに日本でなじみの深い煎(せん)茶の工程方法は、
という工程を踏みます。その他のお茶も発酵のプロセスが入ったりして違いはあるのですが、大まかには一緒です。
明治維新の後に日本にもコーヒーが入ってきましたが、現代ではある意味でお茶以上に日本人に欠かせない嗜好(しこう)品になりました。町中にはコーヒーショップがたくさんありますし、最近ではコーヒーの一種であるエスプレッソや、エスプレッソにミルクを入れたカフェ・ラテなどが流行しています。 いずれにせよコーヒーは、アカネ科の常緑樹である植物の種を乾燥させ、煎って粉砕した食材にお湯を注いで抽出します。飲用に使われるコーヒーは、
となっています。現在は香りを維持する製法がいろいろと開発されているので、紙パックや缶、瓶などに入ったコーヒーも至る場所で売られています。
ココアとコーヒーは似ているので同じ素材から作られている飲み物だと思っている人も居るかもしれませんが、ココアはアオギリ科カカオノキ属の常緑小高木であるカカオの果実の中にある種から作られます。ココアを加工すると、チョコレートが完成します。
コンビニエンスストアに行くと大量の清涼飲料水が並んでいます。例えば、
などです。ニュータイプの清涼飲料とはスポーツドリンクなどを指しますが、こうした清涼飲料も全て加工食品になります。果実飲料は果実を加工した食品ですし、乳性飲料は生乳を加工した食品になります。炭酸飲料を代表するコーラも、アオギリ科のコーラの木の種を砕いて着色し、砂糖液と炭酸ガスを入れた飲み物なので立派な加工食品なのです。サイダーも元々はリンゴ果汁を発酵させたお酒を意味しました。何気なく飲んでいる飲料も、全て加工食品なのです。